ビルメン三種の神器とは?【電験三種・ビル管理士・エネルギー管理士の難易度と取る順番】
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「三種の神器」という言葉を初めて聞いたのは、入社2年目の休憩室だった。
先輩が「お前も神器狙えよ」と言ってきて、正直なんのことか分からなかった。電験三種とビル管理士とエネルギー管理士のことだと教わって、その場では「へえ」と返したが、内心では他人事だった。当時の私は二種電気工事士すら持っていなかったからだ。
結果から言うと、私は3つのうち2つを取った。電験三種とビル管理士だ。エネルギー管理士は取っていない。10年やって「これは要らない」と判断したからで、その理由も含めて正直に書いていく。
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ビルメン三種の神器とは【電験三種・ビル管理士・エネルギー管理士】
ビルメン三種の神器とは、電験三種(第三種電気主任技術者)・ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者)・エネルギー管理士の3つの国家資格を指す業界用語だ。
| 資格 | 直近の合格率 | 勉強時間の目安 | 受験資格 |
|---|---|---|---|
| 電験三種 | 約12〜21% | 約1,000時間 | 制限なし |
| ビル管理士 | 30.6% (2025年度) |
360〜1,000時間 | 実務経験2年以上 |
| エネルギー管理士 | 33.5% (2025年度) |
300〜600時間 | 制限なし (免状交付に実務1年) |

【ここが大事】数字だけ見ると、合格率はビル管理士とエネルギー管理士のほうが高い。難易度の順番は「電験三種 ≫ ビル管理士 ≒ エネルギー管理士」で、電験三種だけが頭ひとつ抜けて難しい。
なぜこの3つが「神器」と呼ばれるのか
理由はシンプルで、3つとも法律で「選任義務」がある資格だからだ。
- 電験三種:高圧受電設備のある建物に、電気主任技術者の選任義務がある(電気事業法)
- ビル管理士:延べ床3,000㎡以上の特定建築物に選任義務がある(ビル管法)
- エネルギー管理士:一定規模以上のエネルギーを使う工場・事業場に選任義務がある(省エネ法)
資格を持っている人間が現場にいないと、会社が法律上その物件を管理できない。つまり「いないと困る人」になれる。これが4点セットとの決定的な違いだ。
4点セットは「持っていると採用されやすい資格」だが、三種の神器は「持っていないと会社が困る資格」になる。立場が逆転する。

電験三種【3つの中で圧倒的に価値がある】
先に結論を書くと、3つのうちどれか1つだけ取るなら電験三種一択だ。難易度は一番高いが、見返りも桁違いに大きい。
合格までに1,000時間。私は3年かかった
初学者だと約1,000時間が目安と言われる。毎日3時間やって1年、という計算になる。
私は入社5年目から始めて、合格まで3年かかった。理論・電力・機械・法規の4科目を一発で通すのは無理だと早々に諦めて、科目合格制度を使って1年に1〜2科目ずつ潰していった。
【正直な話】一番きつかったのは機械だ。範囲が広すぎて、何をやっても終わりが見えない。3回落ちた。宿直の待機時間をほぼ全部つぎ込んで、それでも3年かかった。頭がいい人なら1年で取ると思うが、私は違った。
ただ、この「宿直中に勉強できる」というのはビルメンの最大の利点でもある。夜勤・宿直のきつさはあるが、資格を取るための時間だけは他業種より確保しやすい。
取ると何が変わるか
- 高圧受電設備のあるビル・施設で電気主任技術者として選任できる
- 求人の選択肢が大きく増える(特に系列系・官公庁系)
- 資格手当が月1〜3万円(会社によっては5万円以上)
- IT・インフラ系への転職でも「難関資格を取れた人」として評価される
勉強法・使ったテキスト・科目の攻略順は 電験三種の勉強法 に、試験日程と申込方法は 電験三種の試験日程 にまとめている。
ビル管理士【実務経験2年の壁がある】
2つ目がビル管理士。正式名称は建築物環境衛生管理技術者という。
入社直後は受験すらできない
ここが最大の注意点で、受験には実務経験2年以上が必要だ。特定建築物での環境衛生上の維持管理業務が対象になる。
未経験で入った1年目に「三種の神器を全部取るぞ」と意気込んでも、ビル管理士は物理的に受けられない。まず4点セットを取りながら2年働く、というのが唯一のルートになる。
なお、試験を受けずに講習を修了するルートもある。ただし受講にも実務経験の要件があり、費用も10万円を超える。会社が出してくれるなら講習、自腹なら試験、という判断でいいと思う。
2025年度は合格率30.6%と易しくなった
例年は10〜20%台で推移していたが、2025年度(令和7年度)は30.6%と大きく上がった。3人に1人が受かる計算になる。
試験範囲は空気環境・給排水・清掃・害虫・ゴミまで異様に広い。ただし1つ1つは深くない。電験三種が「深くて狭い」なら、ビル管理士は「浅くて広い」。暗記が苦にならない人ならこちらのほうが楽に感じるはずだ。
【正直な話】私は電験三種のあとにビル管理士を受けたので、正直かなり楽だった。電験の1,000時間に比べたら、半年で終わる試験は短距離走に感じる。順番として電験を先にやるのは、精神的にもわりと合理的だと思う。
エネルギー管理士【工場系なら強いがビルメンでは出番が少ない】
3つ目がエネルギー管理士。そして私が唯一取らなかった資格でもある。
選任義務がかかる場所が違う
エネルギー管理士の選任義務は、省エネ法にもとづいて年間のエネルギー使用量が一定規模以上の工場・事業場にかかる。電験三種やビル管理士が「ビル」に紐づくのに対して、この資格は「工場」に紐づいている。
合格率は2025年度で33.5%。近年は30%台で推移していて、勉強時間も300〜600時間と、電験三種の半分以下で済む。受験資格の制限もない。数字だけ見れば一番取りやすい神器だ。
ただし免状の交付を受けるには、合格後にエネルギー使用の合理化に関する実務経験1年が必要になる。試験に受かっただけでは免状がもらえない点は覚えておいたほうがいい。
私が取らなかった理由
10年で回った現場は、オフィスビル・商業施設・病院だった。この3種類の現場で、エネルギー管理士の選任の話が出たことは一度もない。
同じ勉強時間を使うなら、電験三種の科目を1つ潰したほうが手当にも求人にも直結した。だから優先順位を下げ続けて、結局取らないままビルメンを辞めた。後悔はしていない。
ただし工場系・プラント系に行きたいなら話は完全に別だ。その世界ではエネルギー管理士は電験三種と並ぶ武器になる。自分が行きたい現場のタイプで判断すべき資格で、「神器だから取る」という理由で手を出すものではないと思う。
取る順番は「4点セット → 電験三種 → ビル管理士」
10年かけて全部やってみた結論として、順番はこうなる。
| 時期 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1〜2年目 | 4点セット (二種電工・危険物乙4・ボイラー・三冷) |
ビル管理士の受験資格(実務2年)を待つ期間になる |
| 3〜5年目 | 電験三種 | 一番時間がかかるので、体力と集中力があるうちに |
| 電験の後 | ビル管理士 | 電験のあとだと相対的に楽。実務経験も溜まっている |
| 必要なら | エネルギー管理士 | 工場系を狙うときだけ。ビル系なら不要 |

ポイントは電験三種を先にやることだ。理由は2つある。
1つは、実務経験2年を待つ間に電験の勉強を進められること。ビル管理士は待つしかないが、電験は今日から始められる。
もう1つは、電験三種は年齢が上がるほどきつくなること。1,000時間を確保するには生活の一部を差し出す必要がある。家庭の事情が増える前にやったほうがいい。私は子どもが生まれる前に始めていて、それでもぎりぎりだった。
4点セットの中身や取る順番については ビルメンのおすすめ資格ランキング に詳しく書いている。
💰 資格手当がいくらつくか、先に調べておく
同じ電験三種でも、会社によって手当は月1万円から5万円まで開く。1,000時間かける前に「その資格がいくらになる会社なのか」を知っておいたほうがいい。建設・設備系のエージェントなら、資格手当や昇給条件まで事前に確認できる。
神器を取っても年収が上がらないことがある
最後に、一番書いておきたいことを書く。
私は電験三種とビル管理士、それに消防設備士甲4まで取った。それでも年収は380万円から動かなかった。
資格が悪かったのでも、勉強が足りなかったのでもない。その会社が資格を金額に反映しない体制だったというだけの話だ。手当は電験で月1万円、ビル管理士は加算なし。1,000時間かけて月1万円だった。
神器は「持っていないと会社が困る資格」だと最初に書いた。だがそれはその資格が必要な物件を持っている会社にいる場合の話だ。高圧受電設備のない小さな現場ばかり請けている会社にいれば、電験三種は宝の持ち腐れになる。
資格の価値は「どこで使うか」で決まる
系列系・公共施設系・官公庁系は、独立系より資格手当が明らかに高い。同じ電験三種で月1万円と月3万円の差が普通にある。年間24万円、10年で240万円の差だ。
だから、資格を取るのと並行して「その資格がいくらになる会社なのか」を調べておいたほうがいい。取ってから気づくと、私のように5年を無駄にする。
私は結局、資格を活かす道ではなくIT転職を選んだ。難関資格を取れた学習能力そのものが評価されて、年収は大きく上がった。その経緯は ビルメンからIT転職した話 に書いている。
三種の神器は間違いなく強い資格だ。ただ、資格は場所を選んで初めて力になる。取ることと同じくらい、どこで使うかを考えてほしい。
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📑 データの出典
| データ | 出典 |
|---|---|
| 電験三種の合格率・試験制度 | 一般財団法人 電気技術者試験センター https://www.shiken.or.jp/ |
| ビル管理士の合格率・受験資格 | 公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター https://www.jahmec.or.jp/ |
| エネルギー管理士の合格率・免状要件 | 一般財団法人 省エネルギーセンター https://www.eccj.or.jp/ |
| 各資格の選任義務(法令) | 電気事業法・建築物における衛生的環境の確保に関する法律・エネルギーの使用の合理化等に関する法律 |
※合格率は年度によって変動します。勉強時間は個人の前提知識によって大きく異なります。最新の試験制度は各実施団体の公式サイトをご確認ください。
